清涼院流水 『ジョーカー 涼』
ブラーヴォ、清涼院流水!!
思わずそう叫びたくなる一冊でした。
推理小説というジャンルにおいて手放しでこれほど楽しめた小説、
ありそうでなかなか無かったように思えます。
今日紹介いたしますは清涼院流水の紹介 『ジョーカー 涼』
読者のミステリ魂を試される一種の試練のような一冊なのではないでしょうか?
- 清涼院 流水
- ジョーカー涼
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1974年8月9日兵庫県生まれ。京都大学経済学部在学中の1996年に、『コズミック世紀末探偵神話』(2分冊の下巻が講談社文庫に本書と同時収録)で第2回メフィスト賞を受賞しデビュー。同書は型破りな設定やストーリーが発表当初から大きな反響を呼んだ。第2作となる本作品『ジョーカー旧約探偵神話』は『コズミック』と対をなしており、両作品を通読してはじめて浮かび上がる仕掛けが施されている。その後も問題作を多数発表、ミステリー界で特異な地位を占めている。著書に『19ボックス新みすてり創世記』、3分冊で原稿枚数4200枚におよぶ『カーニバル』シリーズ(すべて講談社ノベルス)など。
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今日も今日とて清涼院流水・・・
『ジョーカー清・涼』、『コズミック流』 と読み進め、さきほど 『コズミック水』 を買ってきてしまいました。
まさかこれほどハマるとは・・・ 人生何があるかわかりません。
何にはまったかと言うと、『ジョーカー清・涼』 そのものにです。
アマゾンの評価を見ると、おもしろいことに、最高評価と最低評価に分かれています。
なるほど、確かに評価の割れる面白い作品だったと思えます。
この作品を受け入れられない人は、よほど本格ミステリが大好きなのでしょう。
愛している人と言っても差し支えないかと思います。
しかし、『コズミック・ジョーカー』 を壁に投げつける前にちょっとだけ待って欲しい。
そして一瞬だけ考えてもらいたい。
あなたの好きなミステリって何なの? と
この小説がどういうジャンルに当てはまるのか、僕にはわからない。
キャラ萌えものかもしれないし、本格かもしれないし、アンチミステリかもしれない。
もしかしたら推理小説ですら無いのかも知れない。
感覚から言えば、counter-mystery、とでも名付けたら僕は満足できてしまう。
《読後感想文》
最高の頭脳を持つ探偵集団JDCに所属する探偵たちによる推理の饗宴・・・
とまでは行かなかったりするのでした;
探偵たちの前評判に期待しすぎたためか、
次々に出てくる探偵たちの能力に少々頭をかしげてしまうこともあったりなかったり・・・
JDC、大丈夫かー!?
そんな中、一際だったのがトンチ探偵・龍宮城之介、名前もすごいが推理もすごい。
留まることをしらない疾走する想像力を駆使し、隠されたメッセージを読み解く・・・
おそらく清涼院流水さんにとって最も書き易い探偵さんだったのでしょう。
一番輝いていたかと思います。
肝心のミステリとしての内容ですが、『虚無への供物』 の呪縛から逃れられない、一個の話です。
中井英夫さんは一人の文学者として敬愛しているものの、
『虚無への供物』 を遺したという大罪に関しては強い憤りを感じております。
一体どれほどの著名な推理小説作家が 『虚無への供物』 を読み、だめになったか。
『虚無への供物』 を生み出したこと、推理小説界一番の犯罪だと思います。
フロイト学派やサイードの論、ウェーバー、マルクス・・・数を上げれば限り無いですが、
優れた論文や思想が表れると、一家を成すべき大家までその論に飛びつき、
その論のコピーや副産物を排出するようになる。
そういったものを見せられて、一体誰が感化されるのであろうか。
作者が自らのオリジナリティを自身で減退させ、それで自己満足してしまう。
非常にもったいない話だと思います。
何はともあれ、幻影城連続殺人事件、おもしろかったと思います。
これほどのアイディアを惜しげもなく使う姿、やはり泡坂妻夫さんを思い出します。
オモチャ箱をひっくり返したような乱れ散るミステリ、ミステリ、そしてミステリ。
自分がどういうミステリが好きなのか考えながら読めば、きっと壁に投げつけないかと思います。
これを使って犯人当てなぞやったら面白いのではないでしょうか??