牧阿佐美バレヱ団 『ノートルダムドパリ』 | Pの食卓

牧阿佐美バレヱ団 『ノートルダムドパリ』

わざわざ劇場に足を運ぶ理由、それは人それぞれあると思う。

私にとっての理由は、世界を感じるため、その一つに尽きると思う。


ワインレッドの重厚なヴェルヴェットのカーテン。

どこかしら浮き足立った雰囲気のドレスアップをした人たち。

遠くから聞こえてくる作品に対する言及、ぺらぺらとパンフレットをめくる音。

それらの一つ一つが新しい世界を予感させてくれる。


7月23日、午後2時ちょうど、また一つ新しい世界が私の前に開かれた。


牧阿佐美バレヱ団 『ノートルダムドパリ』 の幕がするすると、

心地よい布擦れの音を振りまきながら、ゆっくりと上がっていった。


幕開けで衝撃を受けた。

今回の衣装はイヴサンローランということで期待はしていたが、

まさかこんな衝撃的なものだったとは・・・


前衛的でありながらも中世ヨーロッパを強く感じる・・・

貴族たちのかぶる不釣合いなほど背の高い帽子、

白と黒を基調とした丈の長いぞろぞろした服、

そして民衆の着る目も覚めるような色とりどりの服、

まさに馬鹿祭の世界がそこに広がっていた。


ダンサーも超一流ということは素人目にもはっきりとわかる。

ヒロイン・エスメラルダ役のルシア・ラカッカのコケティッシュなダンス。

強く柔らかくしなやかでバネのある動きが私たちを虜にする。


悪役のフロロを演じた菊池研も負けてはいない。

冷ややかな空気をまとう演技は舞台上に緊張感をもたらし、思わず息を呑んでしまう。

メイクもマリリン・マンソンみたいでアンチクライストぶりを発揮していた。


そしてカジモド。

リエンツ・チャンの演じるカジモドの無言の表現力。

痛切なまでに哀切な動きは見るものの涙を誘わずにはいられない。


著名人もいたりと文化的な空気が漂う劇場で、

のびのびと過ごすことができました。