Pの食卓 -22ページ目

第五回 突発例会 Bさん作 『七夕ダイイング』 を読んで

今回は副会長の初の作品となる『七夕ダイイング』を読みました。


七夕の日に殺人事件が起き、

ダイイングメッセージが残される。

主人公と読者はそのダイイングメッセージを読み解き犯人を当てる小説です。


Bさん本人は自信なさそうな感じで発表しておりましたが、

なるほど、と思えたのでもっと自信を持ってガンガン書いてもらいたいものです。


本人も認めておりましたが、やはり書く側と読む側とで、

求めている情報が違うということがあります。

読み終えたあとの感想で出た改良点を加えれば、

会誌にまとめるとき、素晴らしいものとなること間違いなし。


またBさんの提案により、人数が増えたらリレー小説を書く計画が持ち上がりました。

推理小説でやるのですから、今までにないものになるのではないでしょうか。


インターネットでの社会人部活、推理小説研究会『ネトミス』

鋭意活動中なので、興味のある方コメントまでどうぞ!

宮部みゆき 『あやし』

夏ですね。

夏といえば物の怪が巷に溢れる季節。

ということで今回は 宮部みゆきの『あやし』 を紹介いたします。


宮部 みゆき
あやし

江戸時代の市井を舞台に短編がいくつか入っています。

どれも語りのテクニックにより、ぞっとするもの、

あやしと思うものの魅力が引き出されています。


ネトミス副会長のBさんに本占いをしてもらって、

勧められたのがこの本ですが、

見事に好みに合いました

さすがBさん、皆さんも占ってもらうといいです。


ハリウッド的な恐さで無い、あやしの恐さ。

日常生活に潜む、不可解な話、

そんなものに魅力を感じるかた、買いです!

7 月 20 日

月が綺麗な夜でした。

初島の海に月影が映りこみ、

夜の海と空が一つに溶け合っていた日でした。


露天の湯船に浸かりながら、

月を見ていると、

ふぅっと吸い込まれそうな気分になりました。


一度上がりましたが、

なんとなく月光に呼ばれ、

もう一度入りなおしました。

僕にとっては奇妙な事でした。


翌朝、早く目が覚めたので、

お師匠の論文を読みました。

時間潰しように持ってきていたのです。


僕のお師匠は英語、シェイクスピア、教育者、

人間の生き方全ての面において真実の師匠でした。

少しでもその高みに近付きたくて

一生懸命本を読みました。


その日の朝、論文を半分ほど読みかけた頃、

一本の電話が入りました。


満月の夜、お師匠が天に召されたことを知らせるものでした。


泣きました。


お師匠は常々「工藤好美先生を越えることができなかった」と

おっしゃっていましたが、

多数の教育者を育てたお師匠は比類無き素晴らしい教師でした。


江戸っ子でかっこつけていて、かっこいい先生でした。

語気は強まったり、激昂したりすることもありましたが、

それでもその下には深い人間愛の精神が流れていました。

僕が安い酒を飲んでいると怒る先生でした。

まるで孫のように扱ってくださった先生でした。


最後の時間を占有した先生、僕たちの成長を信じて安らかにおねむりください。

旅行のため三日ほど更新停止

行ってきます。

有栖川有栖 『孤島パズル』

孤島で行われる連続殺人。

犯人は共に食卓を囲んだ知り合いたちの中にいる・・・

有栖川有栖がただの推理小説家ではない気がしてきました。


有栖川 有栖
孤島パズル

孤島、あらし、定期船は二日後。

そのような閉鎖的な空間で行われる連続殺人

何よりもぞっとさせられるのは、

被害者と加害者が一緒の空間で過ごしているということです。


宝探しをしに来たアリスたちにとってはとんでもない事態です。


宝探しと殺人事件の解明、この二つのプロットが互いに影響しあい、

最終的にはパズルのピースのように二つが一つの完成図となる

凄惨な事件とは裏腹に納得のいく解決でした。


犯人が殺人にいたる動機、被害者が殺害される理由、

どちらもそれ相応のもので、悲しいものでした。

必ず犯人にたどり着く文が本文にあるため、

あれ?この人しかいない・・・と推理が行き詰ったとき、

僕たちは江神部長のように苦しい思いをするでしょう


有栖川有栖、推理小説としてだけではなく、

文学の響きを感じさせる心の描写があります。

買いでした。

アガサクリスティ 『マウストラップ』 芝居を見て

昨日、副会長Bさんと共に、アガサクリスティの芝居『マウストラップ』を見てきました。

場所は三百人劇場、とても好きな劇場です。

なんと行っても観客と舞台との距離が近いのがいいですね。


themousetrap


舞台は豪雪で閉ざされたマンクスウェル山荘、

密室と化した山荘無いで行われる、殺人事件。

そして非協力的な客人たち・・・ 燃えるシチュエーション。


舞台のセットもなかなか良いものでした。

19世紀前半を思わせる家具で統一され、

芝居内においても古き良き大英帝国を偲ばせる効果がありました。


俳優さんたちの演技も良く

特におばあちゃん役の人がずば抜けて良かったと思います。

出てくるだけで舞台上の雰囲気が変わり、

暖炉の温かみや、部屋の中の寒さまで伝わってきます。

セリフを言えば、他の俳優も聞き耳を立てているかのように静まります。

本当に良かったなあ。


会長副会長ともに予備知識無しで犯人は誰か推理してみました。

結果

二人とも推理は大ハズレで惨敗といったところでしょう。


本当に楽しめた劇でした。

芝居好きな方、推理小説好きな方、どちらの方にもお勧めできる芝居でした。

未見未読の方は、是非三百人劇場まで。


アガサクリスティ 『エッジウェア卿の死』

今日も今日とてアガサクリスティです。

より広範囲の推理小説を読まなくてはならないにもかかわらず、

一つにのめり込んでしまう悪い会長です。


今日読み終えた小説は『エッジウェア卿の死』です。

アガサ・クリスティー, 福島 正実
エッジウェア卿の死

例の如くヘイスティングズが登場しているので買いました。

この小説、原題がとても良いです。

Lord Edgeware Dies

妙な詩的情緒があります。探究心もくすぐられます。

表紙の美しさも目を引きます。


内容もそれに劣らず優れていると思いました。

評価はそこまで高くはないかもしませんが、

何重にも張り巡らされたトリックの数々には、

思わず 「してやられた」 言う事間違いなしです。


ヘイスティングズですが、今回もヘイスティングズ節が効いています

見所は、対立関係にあるジャップ警部と意気投合するところです。

その内容は 「ポワロは最近ボケてきてかわいそうだ」 といったものです。

大の大人二人が頭を並べて親友の呆けを嘆く姿

捜査もせず何をしているのやら、と思わず笑いがこみ上げてきます。


公爵や女優など、ミドルハイからハイクラスの人物が登場し、一見豪勢ですが、

事件の内容は派手というよりも渋いです。

外見と内面の相違が描かれたイギリスらしい作品ではないかと思います。


表紙の美しさがたまらないです。

第四回例会 自作『ベルモントの国賊』を読んで

表題のような自作推理小説を発表いたしました。

アイディアに突き動かされ、二日間という短期間で仕上げた作品でした。

結果から言うと、研究会内では評判悪く、大失敗でありました。


<反省点>

地の文に二箇所のミス、伝聞に嘘を交えるなどルール違反が、

読者を混乱の淵に陥れてしまったことが悔やまれます。


また毒物など、よく知らないこと、実際に体験していないことを扱うことは、

非常に難しいことがわかりました。

今後、自作推理小説において、毒物関係には手を出さないことに決めたのであります。


パズルのピースがはまった感じがしない。

おそらく探偵役の登場人物に全能性を持たせてあげることで解決するかと思います。

一般の我々と同じように、わからないところは推測で乗り切る、ということは

推理小説においてアンフェアだということがわかりました。


<次回に活かせる点>

アリバイというものに興味が湧いてきたことがあります。

アリバイなんて崩されるためにあると思っているため、

そのようなものを小説内に出すことは意味がないと思いましたが、

読者側から見て、推理小説では、アリバイトリックは醍醐味にあたることがわかりました。


ダミーの扱い方も少しずつわかってきました。

まったく意味の無いダミーは必要外、または読者を混乱させるとして悪である。


推理小説において、動機はそれほど大事ではない。

人一人の命を、例え小説内であれ、奪うわけですから、

それ相応の価値のある動機が必要だと考えておりましたが、

人が死ぬこと、または犯罪が起こることが前提である推理小説において、

そこまで重要な要素ではないことがわかりました。


犯人当てではなく、一つの短編小説としては読むに耐えられる作品だと思います。

興味のある方はお知らせください。


次回はアリバイを重視し、反省点を活かしたパズルを考えてみようと思います。


日ごろ文章を書くこと、論理的であることが生業でありますが、

実際自分で作品を書くとなると、非常に難しいことがわかります。

ディケンズやシェイクスピアといった偉人たちの偉業が、

どれほど素晴らしいものであるか再認識するのであります!

ドストエーフスキィ 『罪と罰』

ドストエーフスキィと聞き興味をもたれるかたは数多いかと思います。

その中で最も知名度の高い 『罪と罰』 について紹介します。

ドストエフスキー, 江川 卓
罪と罰〈中〉

本来、お勧めしたいのは米川正夫訳の方なのですが、

どうやら絶版ということで、残念な限りです。

あの濃厚な人間味溢れる名訳を失うことは多大な損失です。


『罪と罰』 には様々な仕掛けがあります

ロシア文学専攻ではないので、あまり知ったかぶりはできませんが、

少し仕掛けを解いてみたいと思います。


一番目につく構成について。

『罪と罰』 は六編+エピローグという構成になっている。

なぜ素直に七編としなかったのか。


キリスト教において七という数字は完全数であり、

それより一少ない六は不完全な数字とされる。

わざわざ6+1という構成で小説を作った意図はなんだったのか

読者には作者の意図を追跡する自由が与えられているのです。


他にもロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフの名前の秘密や、

そこに込められた反キリスト者のイメージ。

とにかくそのような仕掛けを解くだけでも面白い。


ストーリーや描写等は本業の方におまかせして、

素人の楽しみ程度の紹介をしてみました。

しかし、最も重要なテーマは、人の命の価値にあるかと思います。


長いということで敬遠していらっしゃる方はまず買って読んでみてください。

アガサクリスティ 『ABC殺人事件』

今日紹介したい作品は 『ABC殺人事件』 です。

例の如くヘイスティングズが出ているわけですが、

いつの間にやら南米帰りになっておりました・・・ 前の巻を買わねば;


と個人的な話はそこまでにしておいて、

この『ABC殺人事件』、なかなかどうして読ませてくれます。

アガサ・クリスティー, 堀内 静子
ABC殺人事件

とても有名な話なので、ストーリーをあらかた知っている、

もしくは名前だけでも知っている、という人はいるのではないかと思います。

もし本で読んでないならば、今すぐ本屋さんで買って来て、

明日の朝には読み終えてしまうのがいいです。


何よりもABCというアルファベット順に殺人が重ねられていく、

しかもその法則が僕たちにはわからないときている。

解っている事は、アルファベットに対応した土地で、

そのアルファベットのイニシャルも持つ人物が殺される

さらに現場にはABC鉄道案内が・・・


ABCの様々な法則が、頭の中で、自然と展開されていきます。

動機の見えない、いわば顔の無い殺人に、ポワロたちが挑戦していく

解決までの過程がとてもスリリングに語られているのが魅力的です。


しかしこの小説が魅力的な理由は他にもあります。

ヘイスティングズとポワロの会話です。

頭頂部が薄くなったことを必死に隠すヘイスティングズ。

それを気遣いうまい整髪屋を紹介しようとするポワロ。

電車の中で読んでて思わず笑ってしまいました。

なんて仲良しな似たもの同士な二人なんだろうと思います。


他にもヘイスティングズがポワロについて、

「かわいそうなポワロ、もうろくしてしまって」

など、読んでいてふと凄惨な殺人事件から温かい生活へと引き戻されるよさがあります


『ABC殺人事件』 買いですよ。