Pの食卓 -3ページ目

年休の後始末

葉村なら絶対行く、葉村なら・・・ と自分を鼓舞して行くのもまんざら悪くないもの。

スーツを着たときも、お腹周りがぐんと緩んでいて、思わず頬も緩んでしまう。

現金なものだなあ、と自分に呆れつつも、タイピンとお気に入りのネクタイを選ぶ。

38度出てましたが、無かったことにして、職場に突撃してまいりました。



職場につくと、皆さん暖かい笑顔で迎えてくださり、思わずじわりと来るものがありました。

ぺーぺーの私でもちゃんと歯車のひとつとしてかみ合っていたのだー、そう思いデスクに就くと、

目の前には未処理の書類の山・・・

じわりと来たのは目だけではありませんでした。



養生のために休暇を取るも、結果的には自分の首を絞める始末に。

社会に出て休むということは、こういうことなのだな、としみじみ思うのでした。

代打のいない独りきりの職場に勤める全ての人を尊敬します。



朦朧とする意識の中、なんとか研修の施設にたどり着くことができました。

土俵際のやりとりには自信のあるタイプで、体の無理も何とかなると思っていたのですが、

これが今日ばかりは大敗大敗。



ケロロン、ケロロン、とお前はカエルか!とツッコミをいれたくなるくらい・・・

いや、むしろカエルになって胃袋の中身を全て洗いたいくらいに酷い気分。

そして食べたものといえば


510


ひからびちゃって涙も出ない。

リポDをおかずにヴァームを食べながら、優雅に伊右衛門をすすって、

食後の薬を嘗めながら、デザートの推理小説を読む。



なんだかだんだんと調子が出てくるものだから不思議ですよね。

ダメなときこそ好きなことをする、これって本当に薬になるんですね。

なんとか倒れずに研修を終えることができました。



責任の大きな仕事を目の前にいくつも控え、冷や汗ダラダラ。

あれだけ冷や汗かけば、熱も冷える。

あっという間に本調子に戻ったような感じです;



読みかけの推理小説、『閉ざされた夏』、これも若竹七海さんの作品で、

副会長Bのブログで良い感想があがっております。

江戸川乱歩賞関連であるため、非常に期待を持って読んでおりますが、これが中々読ませる。

葉村シリーズや葉崎シリーズとは異なる読み心地に、思わず引き込まれてしまいました。


若竹七海 『悪いうさぎ』

    「おじさん、ねえ、そのうさぎ、どうして檻に入れてるの?」

    ミチルが大きな声で男に尋ねた。 男はまじめくさって答えた。

    「ああ、こいつはね、悪いうさぎなんだよ」

                             (『悪いうさぎ』 地の分)


タイトルにもなっているキーワード 「悪いうさぎ」 ですが、

この言葉、皆さんはどのように受け止めたでしょうか?


今日読み終えた作品、 若竹七海さんの 『悪いうさぎ』 からの文章でした。

毎度若竹さんの作品からは精神的な衝撃を受けるわけですが、

この小説でも、やっぱり同じ印象を受けるのでありました。


若竹 七海
悪いうさぎ

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少女たちはどこに消えたのか?
家出中の女子高生ミチルを連れ戻す仕事を引き受けた私は、彼女の周辺に姿を消した少女が複数いることを知る。好評葉村晶シリーズ

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『依頼人は死んだ』 に続き女探偵・葉村晶シリーズ第二段 『悪いうさぎ』 です。

葉村晶は一見さばさばしており、繊細さに欠け女性っぽくなく、仕事一本の女性に見えるのですが、

その実、部屋作りに凝ったり、他人の領域に踏み込んだりと、

人間的にとても奥の深い魅力的な女性なのです。


そんな彼女の最も魅力的なところは、どんな状況下においても生活を愛しているということ。

この部分が本当に好きで、葉村シリーズを読むのが楽しみな毎日でした。

生活が好き、そんな人と一緒にいたくなる、そう思わせてくれます。


さて作品


冒頭の事件が全てを物語っているかと思います。

ただ仕事をしただけの葉村、ただその場にいただけの葉村、

それなのに全ての関係者が葉村の方を見る。

そして、色んな人が葉村の足を踏んづけていくのです。


身も心もズタボロになりながら、それでもカーテンを作ったり、

他所行きの靴を持っている葉村の姿を目にすると、思わず心が揺れ動きます。

どうしてこんなに酷い状況下なのに・・・ でも、そこなんですよね。

勝手に同情すんな、と葉村に言われそうです。


事件の発端は、ある女子高生の失踪にありました。

そして、その女子高生の行方を探るうちに、

一人、また一人と行方知れずとなった人が・・・


そしてその一人一人を結びつける、一つの言葉。


 「うさぎ」


この意味に気がつき、葉村は真相へと一歩一歩近づいていく。

そしてそんな葉村を襲う容疑者たち!


いつもの如く四面楚歌といった状況下において、

葉村が取った行動は、真相を突き止めること・・・

そのひたむきな姿にまたもや心を動かされm(ry


脅威のリーダビリティ、460ページにも及ぶ長編なのですが、

ページをめくる手が止まりません!

あれよあれよというまに事件が展開していき、

いつの間にか最後のページへとたどり着いている・・・


「事件の謎」 「中盤のサスペンス」 「意外性のある結末」 はミステリにおいて重要な要素ではありますが

この 『悪いうさぎ』 では特に中盤のサスペンスが優れていた!

中盤というか全編に渡りサスペンスフルな物語でした。


葉村シリーズ好き、女性同士のケンカ、若竹さん好き、普通のミステリに疲れた方、是非購入の方向で!


ネトミス合宿 ~そろそろ帰ろうかい~

二泊三日の金沢合宿も最終日、僕らはやっぱり変わらない。


朝起きない人

素っ頓狂なことばかり言う人

冷静にそれを見つめる人

健康ぶりを発揮する人


顔の見えないネットは恐ろしい、そんな言葉もウソのように、

顔が見えても全く変わらない人たちがそこにいた


さて、金沢旅行も最終日、会員さんの一人が都合により早朝に宿を出ることに。

満面の笑みで送りだしてあげよう、そう決めたわけです。


一番不安に思っていた、例の起きない人が起きるかどうか、でしたが、

恐る恐る声をかけてみると、気持ち悪いほどかわいく起きた!

なんて素直なんだと涙が出るほど嬉しかったわけです。


そんな感動話もありつつ、会員さんの一人を送り出し、再び床に就くことに。

しかし、これがいけなかった・・・


朝九時、例のごとく遅い朝食の時間となったわけですが、

起きない人が起きない!

さきほどの素直さとはもはや別人・・・

ゴジラVSビオランテのような壮絶な闘いを繰り広げた末、

心身ともにズタボロになりながらも、ゴジラことPが勝ちました。

一度は諦めましたとも・・・


そんなこんなで色々ありましたが、三日目はお土産を買うことに!

買ったお土産は柚餅子! 柚子の中をくりぬいてゆべしを云々したもの!

これをスライスして食べるとおいしかった!


仕事場の同僚用のお菓子を買ったり、のんびりお茶を飲んだり、

挙句の果てには、お別れの電車内だというのに、眠りこける会長・副会長

最後の最後までどうしようもない僕らですみません;


会員さんたちと別れた僕らは、富山に寄り道することにしました。

富山といえばお鮨! これを食べずに帰ることができるものか!

色々観光しながらお鮨を食べようという計画を立てました。


まずは富山城をめざそう!と思い立ち、進むこと10分。

ちらりと横に目をやれば、そこには川と舟。

船頭さんに手招きされて乗らない法はないだろう、とばかりに乗り込んでしまいました。

いやあ、突発的ですね。 几帳面な人がいたらぶっ飛ばされていたかも;


toyamakawa2  toyamakawa


松川を舟でゆったりのんびり移動しました。

一緒に乗っていた副会長がどう思ったかは知らないですが、会長はとても楽しんでおりました。

川の両側に植わっている木は桜。 桜の季節にはとんでもないことになってるんでしょうね!


途中、写真右のようにサギがいたりと、不思議なおもしろさがありました。

獲物を狙っているのか、変なかっこうで一時停止状態・・・

サギの世界も色々あるんだな、と思いました。


そんな寄り道をしつつ、富山城に到着。

富山城に入る正規ルートから行ったつもりなのですが・・・

小さな羽虫がいっぱい!


景色が霞むほど(いいすぎ?)たくさんの羽虫がわんわん飛んでおり、

もはや突入不可能状態。 何かが異常繁殖してる!

半ば追い立てられるかのように僕らは逃げ去ったのでありました。


一時は富山城に入ることは不可能かとも思われたわけですが、

そこは富山城、ちゃんと抜け道を用意していてくれました。

お堀沿いの工事中通路を抜け、無事入城することができました。


お城の中は博物館のよう。 様々な資料がライトアップされ、こじゃれた雰囲気。

おもしろかったのは手紙関係。


 「この人、他の人より字下手くない?」


と副会長の暴言に加え、


 「まさか四百年後の人に、そんなこと言われるなんて思わないよね」


とかそのような会話が繰り広げられるのでした。

2400年の人にそんなこと言われている情景を思い浮かべるとぞっとしてしまう;

心ひそかに字の練習しておこうかなとか・・・


城も現代になればこういう建築になるのかー、などとひとしきり感心したところ、

お腹の虫がぐーと鳴く。

阿吽の呼吸で食事場探しとなりました。


金沢では食事を取るところを探すのに苦労したわけですが、

富山でもやはり苦労するのでありました。


富山に来たならば鮨が食べたい! ます鮨?それも名物だけどもらった!

岩ガキ食べたい、白エビ食べたい! そんな気持ちで探すこと三十分。

板さんが一人できりもりするカウンター席のみのお店を発見!


丸坊主の若々しい板さんが、爽やかな笑顔で迎え入れてくれました。

まずはビールを注文し、白エビと岩ガキの御造里を!

これがおいしいのなんのってありゃしない!


白エビのほんのりとした甘さ! 甘エビのまつわりつく毒々しい甘さとは格が違う!

見た目の美しさも相まっておいしさ二倍三倍!

副会長には黙っていたけど、いっぱい食べてしまいました。


岩ガキもこれまたとろけるような!

生ガキは一度しか食べたことがありませんが、岩ガキもおいしい!

また食べたい。 オイスターバーに行きたくなりました! シャブリと生牡蠣・・・


その他、富山で取れる季節の鮨を握ってもらい、お腹一杯。

ノドグロのお鮨もおいしかった!


膨れた腹をぽんぽんたたきつつ、僕らは帰りの電車に乗ることに。

あいにく指定席が取れなかったため、富山―越後湯沢はたいへんなことに。

カートのおばさんや車掌さんと猛烈なバトルを繰り広げながら、何とか座れることに・・・


反面越後湯沢から東京はらくらく。 なんてったってグリーン車ですから!

世の中にはかけても良いお金がある、そんな言葉が頭をよぎりました。

旅をするならオールグリーン車だー。


副会長と新幹線の中でどんなことを話したかというと、

ほとんど会話はしないのでありました。


例のごとく二人ともぼーっとしていることが多いので、

気を使わなくて良い感じが良いです。


普通でしたらそんなことは許されないのかもしれませんが、

副会長はそれを許してくれるので、一緒にいて気安い感じが嬉しいです。

法月さんの 『雪密室』 を一心不乱に読みふける副会長を横目に、

僕は僕で空想の世界に入り浸っていられるのでした。


途中、「読者への挑戦状」があったと見せてくれたり、

なんだか色々あわただしくページをめくる音が聞こえましたが、

推理のほうはどうだったのだろう?


ミステリ研究会らしいことを何一つすることなく、おもいっきり遊びに行った僕らでした。

合宿っぽいことができて楽しかったです!


はて、何か忘れているような・・・

                     そうだ会誌作り直さなきゃ・・・


てんやわんやの僕らの活動、これからが始まりなのでした。



追記:

この後、会長Pは原因不明の腹痛と発熱に襲われることに・・・

まさか牡蠣!?と思ったものの、ただの胃腸炎でした;


なんだろう?

給食が半分しか食べられなかった。

いつもなら四人前くらい食べているはずなのに・・・ どうした!?


Pさん顔色悪いよ?

いつもニコニコ何にも考えて無い顔しているのに・・・ どうしたんだろう?


・・・すみません、早引けしていいですか?

「年休って言うんだよ、いいよ」

副校長先生の薦めによって、早退いたしましたとも・・・


仕事を始めて一ヶ月、初めて年休なるものを取りました!

何だか体調が悪く、うろうろうろうろ、事務室内を歩き回ったり、

不審な行動が目立ったため、保健の先生が心配していた模様。


そして極めつけは給食半分しか食べなかったこと・・・

 「どうしたのッ!?」

と災害でも起きたかのような驚きかた・・・

体調が悪いっぽいんです、と応えたら、即行帰宅を命じられました。


帰るその足で病院に行き、診断してもらったところ、病名は


   胃腸炎


カキアタックじゃなくてよかったー!

ネトミス合宿2 ~金沢まわろうかい~

  ぺろーたいへんだー                      ―――ん?どうしたん?

    モノグラフ様に紹介されてるー!               ―――モノグラフ?

      超有名サイトよ。 活動してないのにやばいなw       ―――うほほ、何かしよw


             その数日後、モノグラフの記事を見たKTさんがやってきた




木の船ならいざしらず、泥船でもまだ良い方、笹の葉船に揺られてどんぶらこ。

僕たちネトミスは流れ流され流されて、進むべき方向に進みだしました。

舵を取る操舵手も、方向を決める船長すらいません。

「これでいいのか?」 と何度も話題に上りましたが、答えは一つ。


  「これでいいのだ」


リアルバカボンの会長が下した決断でした。

基本は全員協議、活動は個々好きなようにする、ミステリに対する考え方も統一しない。

ただネトミスという笹船で、雑談しながら、ミステリをもっと好きになれたらいいな

そんな気持ちで続けています。


何だか色々とユルくて、会員さんたちには申し訳ないのですが、

人には持って生まれた天分というものがあるようです。

馬鹿は死んでも直らないと申しますよう、六道を彷徨い歩いたとしても、このままのようです。

あきらめて、このユルユルなペースに、付いてきてください


さて、合宿は二日目に突入。



《二日目》


悪夢はその朝待っていた

朝9時に朝食という超スローな設定にしたにも関わらず、起きない人物が一名

プライバシー保護のため、名前は明かしませんが、その人物を起こすことのたいへんなこと。

普段ならば気の済むよう寝かしておこう、と考えを改めるのですが、他の人がいるので起こすことに・・・


三十分におよぶ呼びかけと、ビオランテのように振り回す触手をかいくぐり、

9時10分、ようやく目覚めさせることに成功・・・

心身ともにズタボロとなりながら、何とか全員で朝食を食べられることに!



どうせ濡れるなら、植物を傘にしたらどうだろう?

 果物を入れたら種と皮を取ってくれる機械、クダモノタベール。

  カニを入れると殻と身を分けてくれる機械、カニタベール。

   食後動かなくても部屋に連れて行ってくれる機械、ショクゴウゴーク。

    極めつけは怪奇・白いナス・・・


会長Pによる様々なアイデアに、会員さんも副会長も、朝から呆れモード全開。

呆れきった副会長Bが一言


  「ぺろーは年取ったら、変な発明するおじいちゃんになりそうで心配よ」


妙なリアリティ溢れる心配に、内心不安を覚えるPでした。




そんな愉快な遅めの朝食を取り、ネボケ眼をこすりつつ、部屋に戻ると―――


  ・・・布団が無い


食後、ごろりと横になって、至福の時を過ごそうかと計画していた僕にとって、

あまりにも残酷な結末でした。

二度寝を封じられたため、予約を入れておいた忍者寺に行くことに!


と、その前に、おみやげ物屋さんに入ることに・・・

観光の一番最初にお土産物を購入しようとする、この無計画さ、吃驚!

買ったものはコレです。


tentoumusi  tentoumusi2


てんとう虫のヨーヨーです。 見つけた瞬間即購入しました!

これを飽きもせず、一日中延々と遊んでいたわけですが

右の写真を見てくださるとわかるかと思いますが、擦り切れて紐が切れています

猛特訓の結果、ヨーヨーをそれっぽく動かせるようになりました!


まだ予約を入れた時間まで間があったため、長町武家屋敷跡をめぐることに!


buke


こんな感じの赴き深い街並みがありました。

Bが言うには、「一つ通りを入るとこういう街並みがあるって不思議

本当に不思議な気持ちになりました!


まあ、そんなこんなで遊びながら、妙立寺-人よんで忍者寺に行くのでした。


妙立寺に仕掛けられたカラクリは、どれもこれも恐ろしいもので、

泡坂妻夫が 『乱れからくり』 のねじ屋敷とは全く異なるもの!

寺の中には、入ったら二度と出られない開かずの間、切腹の間なるものまで!

思わずゾッとしてしまいました・・・

ジョーマエさん開けてください;


そんなこんなで兼六園に向かいました。

歩き疲れ、BもPも会員さんもぐったりしながら公園に入ると、

真っ先に駆け込んだのが、やっぱり御茶屋さん。

そよぐ風の音に誘われて、いつしかPは夢の中へ・・・


幹事でありながら、しっかり居眠りというありえないことまで達成しました;

皆さん本当にすみません、すみません;


その後、コシヒカリアイス(お米入り)、塩ソフトクリーム(富山深層水の塩)を食べ、

金沢市を一望し、そのまま金沢城へ討ち入りに!


kanazawajo


ででん。金沢城は甘味フェアーの真っ最中。

甘味の苦手な会員のKTさんは、目を白黒させながら付いて来てくれました!

思えば金沢旅行、KTさんにとっては地獄ツアーだったのかもしれません。


kanazawajo2  kanazawajo3


金沢城の本丸は、今は無く、代わりに鬱蒼と茂る森がありました。

その森が素敵で、思わず新宿御苑の木々を思い出してしまいました。

あそこ、また行こうな。


金沢城でひとしきりはしゃいだ後、今度は夕飯を食べに市場へ!

市場で食べるものといえば・・・ 決まってますともですお鮨!

おいしいと評判の回転寿司に並ぶこと5分、すぐに入店。


ノドグロなど初めて食べる魚もありましたが、とてもおいしいおいしい!

思わず8皿+汁1杯を平らげてしまいました

Bも同じ量食べたので、皆よく食べるなあと思い隣を見てみると・・・


  会員さん二人の食べた分の和 = PもしくはBの食べた分


これなんて数式?

もちろん夕飯もほぼ残さず食べきりました。

いやあ、何とかなるものだね!


そして夜の闇は濃くなり、お酒タイムへと移行するのであった。

呑んだお酒は 「純米大吟醸・天狗舞」 これがおいしいのなんの!


tengumai


もちろん二人で飲み干したようなものです。

二人って誰かですって? いわずもがな・・・

Bは悪酔いする人じゃないので、一緒に飲んでいて一番好きな相手です。

思う存分呑み尽くし、幸せ一杯な飲酒ライフを送ったのでありました!


KTさんの呆れたような目もものともせず、コップを傾けるのであった・・・

そして二日目の夜は更けゆく。 投稿用作品の校正も終らずに。


ネトミス合宿 ~金沢へいこうじゃないか~

  ミステリ研究会みたいの作ってみたい       ―――おもしろそう。

    サークルみたいにだらだらできるのがいい     ―――いいね、そうしよ。

      ネット上のミステリ研究会、名前、何にしようか?  ―――ネット上のミス研かあ・・・


                       ネトミスでいっか。




こうして社会人のサークル・ネトミスが生まれたのが去年の6月のこと。

副会長Bに薦められた一冊の推理小説、北村薫の 『空飛ぶ馬』。

その一冊がきっかけとなり、今、四人の仲間に支えられながらも、

会長Pとネトミスは(約)一周年を迎えることができました!


一周年だから、というわけではなく、秋に控えた文学フリマに出店するため、

僕らネトミスは金沢で合宿をしてまいりました

目的は、投稿作品を持ち寄り、読んだ感想、意見を交換しあうこと!


というわけで、GWを利用し、僕らは金沢に集まることに!


新幹線とMAXとき号を乗り継ぎ、金沢で待ち受ける難題、

「会誌投稿用作品の校正」 という大問題に頭を抱えながら、

僕たちは緊張の面持ちで金沢に向かうのでした。


MAXtoki


(*写真はイメージ画像です)


金沢で泊まった施設は旅館 「茶屋」 、駅から歩いて五分ほど。

五人部屋もあり、皆で和室の大部屋に泊まることにしました。 (Bが見つけてくれた旅館、ありがとね!)

皆で一緒に寝起きする、なかなか楽しいことでワクワクしました!




《一日目》


旅館に集まった僕たちは、まずは抹茶で一服。

ロビーに座るなりいきなり無断でタバコを吸うもの・・・

初対面であるにも関わらず素っ頓狂なことを言い失笑を買うもの・・・

メッセンジャーでのやりとりと殆ど変わることのない僕らを見て、

会員さんは非常に驚かれたことと思います;


例のごとく、何も決めず、その場その場でブラブラするのが会長・副会長の習性なので、

当然の如く一日目の計画も、当日その場で決めることに!

本当に皆さんすみません orz

でも、結構楽しい僕らじゃないですか? はい、すみません、反省してます; orz


まずは金沢城からみて北西にある、金沢東茶屋町

当時の街並みがそのまま残っているのか、中々赴き深い街並み!

あちこちに朝顔やつつじ、様々な花々が咲き乱れ、思わず嬉しさがこみ上げます


中でもおもしろかったのは、

手で触れてはならない金箔で作られた蔵、意味有り気に転がっている金箔の貼られた石

金箔の蔵の説明係りによると・・・


  「蔵はだめですが、どうしても触りたい人は、その金箔の石をお触りください」


石に触ったら負けだと思い、僕らは金沢東茶屋町を去りました。


途中引いたおみくじは 「吉」。 三月に 「凶」 を引いたBも少し運勢アップ。

会員さんは大吉など幸先の良い話です。


帰る道中、やっぱり会長の気まぐれにまかせ、河川敷を歩くことに;

かえるの卵が見つかったり、結構楽しかったと思いません?
あ、いえ、すみません orz


会員さんが持ってきてくださった日本酒・立山があるにも関わらず、

会長と副会長は酒屋さんに・・・

そして、他の人になされた説明を横で聞き、おいしいと評判のお酒をゲット!!


―――大吟醸・天狗舞


これがホントにおいしかった!と言っても、会長・副会長の二人で飲み干したようなものでしたが;

あと、会員さんの買ったブルーベリワインも残ったヤツ飲み干しました;

二人の食べっぷり、呑みっぷりに、会員さんたちはさぞ驚かれたかと思います;



御飯も食べ、お酒も飲み、気分がほぐれたところで会誌の読み合わせをしました!

まあ、さんざ直さなければならない箇所が出てきたわけですが・・・

頭が痛くなることと共にうれしいことも!


会員さんもBも良い物を書いている!

二人とも自信無さそうなことを言っていましたが、

持ち寄った作品は、どれも当人しか書けないものでした!

会長はそういう作品を第一に大事なものだと思っております


ミステリとしては不十分で、まだまだこれから作り直す点がありますが、

きっと良いものに仕上がると思います。

二日目については明日にでも。


KTさん、Mさん、そしてB。 三日間お疲れ様。

少しは笑ってもらえたので、僕は嬉しいです。

若竹七海 『サンタクロースのせいにしよう』

シャーロッキアンがドイルの 《ホームズシリーズ》 を聖典と呼ぶならば、

僕は若竹さんの作品を聖典と呼びナナミズムを信奉したいと思う。


今まで読んできた若竹七海さんの作品、そのどれもが好きなものでした。

『依頼人は死んだ』 『スクランブル』 この二冊がとくにお気に入りなのですが、

そこに 『サンタクロースのせいにしよう』 も加わりました。


今日読み終えたのは、若竹七海さんの 『サンタクロースのせいにしよう』 です。

本当におもしろかった!


若竹 七海
サンタクロースのせいにしよう

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一戸建てを二人でシェア、料理さえ作れば家賃はタダ。そんなおいしい話を見逃す手はない―。というわけで、気はいいけれど変わり者のお嬢様・銀子さんの家に居候することになった私。しかし、引っ越し早々、幽霊は出るわ、ゴミ捨て場の死体騒動に巻き込まれるわ…なぜかトラブルが続発。郊外の平凡な住宅地を舞台に、愛すべき、ちょっと奇妙な隣人たちが起こす事件を描くミステリ短編集。

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ハムレットと同じ問題がこの本では扱われている。そう思いました。

お師匠にあたる先生が生きていたならば、

初めて薦めることができた本になっていたかもしれません。

それだけ人間関係の本質に迫った本に感じました。


読んでいるうちに何度と無く冷や汗が流れ落ちました。

ミステリ部分はあくまで 《日常の謎》、銀子さんという同居人との気の抜けるような会話、

そういった楽しさの端々にグサリと突き刺さるナイフのような言葉があります。


そういった言葉を目にするたびに、僕は、

生きていく自信を無くし、

なんだか今まで間違って生きてきたと感じるわけです。

確かに間違って生きてきました。


『死んでもなおらない』 という作品が言うとおり、

たとい僕が死ぬようなことがあっても、やっぱりこの性格は治らないわけであって、

なんだかなあ、と思ってしまうわけです。

生きていくことを考えさせる推理小説作家さんって他に居ないんじゃないでしょうか?


若竹さんの推理小説はそういったことを考えさせてくれます。

だから、心の底からオススメしたいと自信を持って言えます。


つらつらと自分の感じたことを書いてしまいましたが、とにかくおもしろかったのです。

作品についてのよりアツい感想は、カラクリリリカルの記事をお読みくださいませ。


泡坂妻夫 『蚊取湖殺人事件』

働き始めて一ヶ月、職場で付いたあだ名が 「ジェントルマン」 ・・・

本名より長いあだ名って考えものな気がする。

仕事にバドミントンに忙しく、もっぱら短編集ばかり読んでいる会長Pです。 こんばんは。


さて、本日読み終えた一冊は、泡坂妻夫さんの 『蚊取湖殺人事件』

書店で見かけた瞬間、迷うことなくレジに持っていける作家さんがいる。

それって幸せなことですよね。


泡坂 妻夫
蚊取湖殺人事件
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スキー場にやって来た慶子と美那。二人はゲレンデならぬ氷上で絞殺死体に遭遇してしまった。被害者の首には包帯が!?警察は二人を疑っているらしい。そこで彼女たちは身の潔白を証明するため、スキー場で知り合った男と協力して犯人捜しを始めるが…(表題作)。「謎解き」「奇術」そして「伝統職人もの」、バラエティに富んだ泡坂マジック、巧みの世界。
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決して評価が高いとは言えない作品群なのかもしれませんが、

僕個人の意見としては、とてもとても楽しく読めた一冊でした!

二時間弱で全て読みきれてしまう楽しさ、手軽さ、

そしてそれらの裏には決して表面にはあらわれない作家の巧さがありました!


さっそく読後感想文に入ります。


《読後感想文》


  雪の絵画教室

    一言で言ってしまえば雪密室もの。盲点とはこういうところにあるのかー、と感心しちゃいました。

    雪密室と絵と事件を結び付けてしまう泡坂さんに感服。

    『空中朝顔』 や 『椛山訪雪図』 のような妖しいまでの美しさとは違う、

    とこかしら牧歌的な面白みのある作品でした。

    出てくる刑事は 『煙の殺意』 で出てきたある刑事さんです。


  えへんの守

    泡坂さんの芸は見たことも無く、実名で出されている著作を手に入れたいと苦心しております。

    この作品は、奇術師としての泡坂さんの好みがにじみ出ているように思えます。

    型にはまった伝統芸能の粋に達した奇術も良い、ショービジネスの奇術も良い、

    だけど一芸に打ち込んだ奇術師の "一芸" が最もおもしろい! そんな印象を受けました。

    一度で良いからそんな奇術を観に行きたいです。


  念力時計

    曾我佳城さんを偲び、思わず涙が一筋・・・

    この作品は 『奇術探偵曾我佳城全集』 と世界を同じにする怪奇小説なような感じです。

    奇術道具愛好家の社家さんが経営する 「機巧堂」、そこに集まる奇術愛好家たち。

    そんな彼らの元に例のミステリーニに関わる奇術道具が・・・ ぐっときます。


  蚊取湖殺人事件

    純然たる犯人当てもの。泡坂さんの作品は色艶があり、人物の心情の描写があり、

    事件には必ず幻めいたものがあり、それでいてどこまでも本格・・・

    まさに理想的な作家さんなわけですが、そんな泡坂さんの犯人当て。

    《問題編》 と 《解答編》 に分かれていて、とっても燃えました!


  銀の靴殺人事件

    奇術師という観点から様々な謎とめくらましを作品内に散りばめる泡坂さん。

    この話で見せてくれた幻影は煌びやかにして見事なものでした。

    なんとなく、エドガー・ドガの作品が脳裏に浮かんで離れない話でした。


  秘法館の秘密

    惣太郎は三十センチほど上に飛びあがった。富子は肥っているので十センチほど飛びあがった。

    こんな文章がとても好きです。まじめな場面であるにも関わらず、ずっこけてしまう描写。

    稚気溢れる内容に加え、本格的な謎と解決が魅力の短編。


  紋の神様

    この話を読んで、女性には着物を着ていただきたいと思わない男性はいないはず!

    紋章について細に入って書かれているだけにも関わらず、

    その文章の隙間隙間からは艶やかな女性の魅力が漂う。

    うーん、これは見事、と思わずうなってしまいました。



やはり泡坂さんは素晴らしい、最近はミステリ好きというより、泡坂さんが好きなのかも?

なんておもうようになってきてしまいました。

ヨギガンジーのしあわせの書、見つけて買いたい!


中島らも 『人体模型の夜』

    遠くかすかに、

    ふつり

    ふつり

    泡のような呟きが響いてきた。

               (プロローグ:地の文)

この引用、何だろう、とてもとても生々しい文章に感じてしまいました。


題名を聞いただけで、一発ノックダウンな怪奇小説でした。

この春ネトミスの新会員となってくだすったMさんの薦めで、即購入したものです。

オススメだけあって、おもしろかった!

そんな 『人体模型の夜』、初めて読んだ中島らもさんの作品だったりします。


中島 らも
人体模型の夜

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一人の少年が「首屋敷」と呼ばれる薄気味悪い空屋に忍び込み、地下室で見つけた人体模型。その胸元に耳を押し当てて聞いた、幻妖と畏怖の12の物語。18回も引っ越して、盗聴を続ける男が、壁越しに聞いた優しい女の声の正体は(耳飢え)。人面瘡評論家の私に男が怯えながら見せてくれた肉体の秘密(膝)。眼、鼻、腕、脚、胃、乳房、性器。愛しい身体が恐怖の器官に変わりはじめる、ホラー・オムニバス。

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怪奇小説には、ゴシック小説のような古風なものと、都市伝説のようなモダンなものがあるように思える。

中島らもの 『人体模型の夜』 はモダンな怪奇小説だと言えます。


物語の舞台となる館、通称 「首屋敷」

この名前でKOなわけですが、入口が三階に付いている、外界と隔絶されている、云々・・・

もう何だろう、この好奇心をくすぐる設定は!

そして暗い部屋に置かれた人体模型・・・


人体模型と聞いて、理科室などにあったアレを思い浮かべてはいけません。

「首屋敷」 の人体模型はハンパじゃないです!

詳細は本を読んでのお楽しみですが、この人体模型・・・ いいですなあ。


さて読後感想文



≪読後感想文≫


  邪眼

    邪眼はシェイクスピア好きが食いつくネタ。フランコ・ゼッフレリ監督好きが食いつくかも。

    構成としては短編推理小説のようなもので、ラスト1行が効果的です。


  セルフィネの血

    楽園のような島国での怪奇話。これもやはりラスト1行が効果的に書かれています。

    夢に描いたとおりの楽園、そしてその真実の姿。その違いは・・・


  はなびえ

    これは純粋な怪奇話。推理小説めいた感は受けるものの、ホラー話です。

    
  耳飢え

    一番好きな話だったかもしれません。江戸川乱歩、までは行かずとも、充分な変態性。

    怪奇小説と変態性はきってもきれぬ仲なので、怪奇小説としての出来はバッチシ!


  健脚行―43号線の怪

    小説中、最も爽やかな印象を受けました。

    ホラーか?と言われると頷けませんが、怪奇小説であることは確か!


  

    人面瘡の話。これも好きな話でした。奇怪な物語と後味の悪さ、秀逸です。


  ピラミッドのヘソ

    1991年の文庫ということを踏まえて読むととてもおもしろい。


  EIGHT ARMS TO HOLD YOU

    ビートルズを巡る謎。ジョン・レノンが作った、というよりも、シド・バレットが作りそうな歌

    でも、何故かジョン・レノンの声が聞こえてきそうな、妙にリアリティのあるものでした。

    
  骨喰う調べ

    これも好きです。特にラストの展開はグッと来ます!

    ラスト一歩手前の状態が特にグッと来ますが、やっぱりこの終わり方でしょう。

    冷血霊園セールスマンの歩む人生が垣間見えます。


  貴子の胃袋

    怖い怖い。子どもを持つことが少し怖くなるような話です。


  乳房
    綾辻行人さんの 『時計館~』 を既読の方は、少しだけニヤリとするかもしれません

    ちょっとだけ、ちょっとだけニヤリとしてしまいましたよ。


  翼と性器

    これは、グロテスクもグロテスク怪奇小説はやっぱりこうでないと面白くないです!

    この話があると無いとでは小説全体の印象も変わっていたことでしょう!

    イヤーな気持ちになりつつも、どこかそれを楽しむ自分に気が付きました。



その他にも、プロローグとエピローグがあるのですが・・・

本編よりもそっちの方が気になって気になって仕方無い!

そんな気持ちでラスト10行を読んだとき、思わず 「やられたー」 と思いました。


登場人物全員に見られることですが、皆頭が良い印象を受けます。

小説のどこを切っても「中島らも」といった感じ。

それが良いか悪いかは作家を好きか否かで決まるわけですが、

「中島らも」好きの人は必読でしょう。


そんなわけで、Mさんありがとう。 とても楽しめましたー!

『ガダラの豚』 は三巻本のようで、長さに断念。 仕事が落ち着き次第読みます!


泡坂妻夫 『湖底のまつり』

副会長のBに就職祝いとして頂いた記念の一冊。

B曰くに 「めくるめくるめくるめくるめく」 推理小説とのことでした。

何だかよくわかりませんが、読み終えて、その意味を体感したように思えます。


本日紹介しますは 泡坂妻夫さんの 『湖底のまつり』 です。

これはすごい一冊だー!


kotei
泡坂 妻夫
湖底のまつり

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旅先で突然増水した川に流された若い女性紀子は、投げられたロープに縋り救助された。その夜助けてくれた若者晃二に身をまかせるが、翌朝彼の姿は消えていた。祭で賑わう神社で晃二の消息を問うと、ひと月前に毒殺されたのだと告げられる。では昨日の人物は何者なのか。文学的香気を漂わす描写のうちに著者の仕掛けた謎があなたを惑わす。

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かつて中井英夫が「マジック」と評した 泡坂妻夫の 『湖底のまつり』。

相当の期待をもって読み始めましたが、その期待を大きく上回る一冊でした!


なんだろう、この眩暈感・・・ なんだろう、この幻惑感・・・

めくるめく物語の奔流にのまれ、気がつけば、華麗な幻想の世界を見ていました。

『湖底のまつり』 泡坂さんの最高傑作群の一つに入るのではないでしょうか!?


解説にあるとおり、一ヶ月前に死んだはずの 「晃二」 の正体を探る小説なのでしょう。

しかし、そういった探偵要素はきっかけにしか過ぎず、

幾重にも重なる物語そして眩暈感、これらに主眼が置かれているのかもしれません。

匂い立つ文章そして謎、最高級品だと思います。


中でも、紀子を初めとする女性の心の機微、その巧緻さは天下一級。

これほどの色気を感じたことは今までありません。

遠くから聞こえてくる祭囃子のような文章・・・


謎解きというよりも、幻惑され翻弄される快感を感じる物語。

数理的ロジックや分析的なものではなく、あくまで艶かしくも妖しい幻想美。

泡坂妻夫の描く幻想美の頂点がここにある気がします。


もう何をどう紹介して良いのかわかりませんが、

とにかく未読の方は是非読まれると良いかと思います。

間違いなく本棚に一冊あるべき小説です!


就職祝いにこれほど素晴らしい本を選んでくれたBに感謝。