Pの食卓 -5ページ目

泡坂妻夫 『乱れからくり』

推理小説や探偵小説を読む際、先入観を持たず、まっさらな気持ちで読み始めるのですが、
そういった気持ちで読めない小説もあります。
「どういう話なんだろう?」 「どんな風に楽しませてくれるんだろう?」
「どんな謎があるのかな?」 「きっとすごいからくりがそこにある!」
わくわくした気持ちで読みたくなる、そういった小説に出会うとき、一瞬の幸せを感じます。

今日読んだ 泡坂妻夫さんの 『乱れからくり』 もそういった一冊でした。
この本、とても好きです!

泡坂 妻夫
乱れからくり 日本推理作家協会賞受賞作全集 (33)
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玩具会社の部長馬割朋浩は降ってきた隕石に当たり命を落としてしまう。その争議も終わらぬうちに彼の用事が誤って睡眠薬を飲んで死亡する。さらに死に神に魅入られたように馬割家の人々に連続する不可解な死。一族の秘められた謎とねじ屋敷と呼ばれる同家の庭に作られた巨大迷路に隠された秘密を巡って、男勝りの女流探偵と新米助手の調査が始まる。日本推理作家協会賞受賞作。
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タイトルを見た瞬間から、うわー!これは読みたい!と思ってしまった推理小説
そして、小説裏の紹介文を読み、すっかり心を鷲づかみされてしまいました!
隕石が落ちてきて死んでしまうなんて!こんなに好奇心をくすぐられるものは無い!

作家さんが泡坂さんであるだけでも、四の五の言わず買いなのです。
Bの紹介を受けて探していたのですが、なかなか書店においておらず、
TRICK+TRAP で見つけたとき、脊髄反射で購入いたしました;

内容はこんな感じです。

 女流探偵・宇内舞子の元に一件のつまらない依頼がやってくる。
 その依頼とは、依頼人・馬割朋浩の妻である真棹の身辺調査というものだった。
 舞子は新米助手・勝敏夫を雇い、身辺調査に乗り出すのだが、
 依頼人が隕石によって命を落とす、という奇禍によって依頼は謎めいたものになる。

 謎の依頼人・馬割朋浩を調べて行くと、なにやら怪しげな 「ねじ屋敷」 や、
 その庭に造られた 「五角形の迷路」 などなど、事件は一層謎を増すばかり!
 そして、舞子の鋭い推理に導かれ、次第に明らかとなっていく、巨大なからくり・・・

・・・文字を読む目が先へ先へと進んでしまい、ページをめくる指が止ませんでした!
泡坂さん、長編は初めて読みましたが、改めてほれ込みました・・・

本書で最も興味深い点は、泡坂さんによるカラクリ指南だと思います。
カタカタ鳥(キツツキみたいな玩具)が、木をつつく様にして上から下へと下りていく様子。
そのおもしろさを子供のような純粋な気持ちで謎解き楽しむ姿
Pもカラクリ玩具には興味があり、いつも不思議だなあ、と思いながら楽しんでいたのですが、
この 『乱れからくり』 で機巧を知り、もっともっとおもしろく感じました!

また、そのカラクリ指南のすばらしいところは、カラクリの説明にあるのでは無いです。
『奇術探偵曽我佳城全集』 で推理小説を楽しむ姿勢、手品を楽しむ姿勢を説いた泡坂さん、
『乱れからくり』 ではカラクリの楽しみ方を教えてくれています!
あー、そうやって楽しむと本当に楽しいですよね!っと首が折れるほど頷きました。

マドージョ、ジュモウのビスクドール、斬らずの馬・・・なんか最高におもしろかった;
ジュモウのビスクドールはバッチリ好みに合う造詣でした。
http://www.hoshibld.co.jp/antique.htm
ここのジュモーのビスクドール、シュワンクマイエルの 『アリス』 に出てきたやつみたい。

まだまだカラクリ指南の良さは続きます。

泡坂さんによるカラクリ指南の最良点は、ありがちな薀蓄話になっておらず、
推理小説の本筋と密接に関係した存在になっている点
こんなカラクリが仕掛けてあったのかぁ、と読後も爽やかな気持ちが続きました。
最初から最後まで 「からくり」 のおもしろさを前面に出していたかと思います。

そして、人物の描き方すばらしい限り。
泡坂さんの作品において、女性は特殊な存在として、デリケートに扱われています。
男性がぞんざいに扱われているわけではありませんが、女性に重きが置かれます。
矛盾に満ちた複雑で妙に現実味のある女性像が描かれています。
僕なんかは、そんな女性像に半ば恐怖を感じることもあります。

言いたい事は山ほどあるし、知りたいことは砂丘の砂粒ほどありますが、
とりあえず、最高におもしろかった!ということを強調して終わります。
乱歩の 『孤島の鬼』 を感じさせる迷路も良かったなあ。

未読の方、四の五の言わず買いです
まだまだ泡坂さんの作品がたくさんあると思うと、何だか幸せな気分になってしまう。
P改め泡坂Pでした。 厚川Pが本名です。

京極夏彦、中山市朗、木原浩勝、東雅夫 『怪談の学校』

怪談をテーマに据えて一つミステリを書いてみようと思い立ち、

一つ怪談をこしらえてみたのですが・・・

これがなんともはや、全く怖くない(笑)


本人が怖がりであるため、怖さのハードルが低いのかもしれません。

読んでくれた人に本の少しでも "怖さ" を感じてもらいたいため、

真剣に "怖さ" について考えてみたくなりました。


一般的に言われることに、"怖さ" を構成する要素として 「日常の崩壊」 があります。

平々凡々と続けられていた日常生活がほんのささいな怪異により瓦解してしまう。

怪談などでそういう話を聞くと、なんとも不安な気持ちになり、

その怪異が自分にも降りかかるのでは?なんてゾッとしてしまいます。


「日常の崩壊」 が故意的に作れるようになれば、それなりの怪談が創作できるのでは?

そう安直に考え、買ってしまいました。


本日紹介いたしますは、京極夏彦 他 『怪談の学校』


怪談之怪
怪談の学校

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怪を蒐め、怪を語り、怪を著す怪談をこよなく愛する怪談之怪、京極夏彦、木原浩勝、中山市朗、東雅夫の四人が、すべての書き手に怪談の作法を徹底的にレクチャー。

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僕が最もゾッとした怪談に、椎名誠の短編 "月の夜" があります。

ネットリからみつくような文体、ぞわぞわっとする語り手との感覚のズレ、

「悪逆咆哮七鬼面像の裏彫り」 「タブマノギャア」 など不可解な小物、

それらに対して 「桜」 「月夜」 「艶っぽい文体」 が美しい。

最後の一文のキレも素晴らしいと思ってしまいます。

( "月の夜" は椎名誠の 『ねじのかいてん』 に収められた一話です。 )


そんな怪談を書きたい!っと思って購入したのが本書。


結果から言うと、参考にはなりますが、本書の帯にあるような

「この一冊で怪談作家になれる!」

という表現には疑問を感じてしまいます;


怪談のスペシャリストたちが、素人の投稿した怪談を分析したり、添削したり、

その過程で "怖さ" のポイントを語ったりするわけですが、いかんせん主観的。

本人たちの口から 「客観的」 という言葉が連呼されているにも関わらず、

本書の肝心要である作家の分析が主観的な印象を受けてしまう…


例えば、「怖さのキモを設定する。」 と言われて、何人の人が実行できるだろう。

まず、怖さのキモってなんだろう?キモってどうやって設定するのかな?

設定したけどキモの場所ってここで合ってるのかな?

そういった疑問がふつふつとわいてきます。


そして悩める怪談創作者に与えられる助言はたった一つ。

「技術が必要とされるので難しい」

…この一冊で怪談作家になれる…

ハウツー本には騙されないつもりでしたが、見事騙されました;


そのように、怪談創作のマニュアルとして購入した場合、本書は期待外れに終ると思います。

しかし、悪い例→添削後、両方の文章を見比べていると、

作家さんたちが分析の中で言わんとしていることが何となくわかる。

受身的ではなく、能動的に理解しようとすることで教科書的役割を果たすのかもしれません。


何はともあれ、この 『怪談の学校』 でヒントをいくつか掴んだので、

オリジナル怪談、もう少し怖くできるかもしれません!?



追記:

現在、午前2時も過ぎ間もなく半になろうかという頃、

トイレの電気が突然、パチンッと切れました。

怪談を読んでいる最中だというのに、真っ暗なトイレに入ることになるとは・・・


勤務校へ行ってきました

sakura


桜がきれいな季節になりました。 コートを着ていると、少し暑いくらいになりましたね。

写真は、この春より勤務する小学校のそばを流れる小川。

その上に桜の枝が掛かっていたので、身を乗り出して激写!

落ちそうになったりと、予想よりも危なかったです;


引継ぎ自体は簡単なもので、1時間ほどで済みました。

前任者の嬉しい心配りにより、どこに何があるか、ほぼ一目でわかる状態に;;

ありがたいです。

高校非常勤をしていたときは、一から全て手探り状態でしたので、嬉しすぎる;;


と、まあ、こんな感じに終ったわけですが、

それだけだとブログに載せるネタにもならないので、

飲物をアップします。


coffee


まずは、新製品とうたわれていた 『丸善珈琲店カフェオレ』

いつかおいしいコンビニのコーヒーに出会うんじゃないかと、

半ばやけっぱちになりながら、色々と試しているわけです。


この手の 『○○屋』 という名前のついたものは、

ブランドという奇妙な安心感に何度だまされたことか…


結果


味  ☆★★★★

殻  ☆☆☆★★

香  ★★★★★

後味 ★★★★★

総合 ☆★★★★


期待するだけ無駄な気がしてくるのであります!


コーヒーの口直しに、今度はこれを飲みました。


bana


すっぱー! バナナミルクと間違えて、バナナヨーグルト買った!

例のごとく、鼻腔に広がる 「バナナッポイ」 香り…

コーヒーの後味は消えたけど、違う霊に憑依されたような気持ちに;


味  ?????

殻  ☆☆★★★

香  ☆☆★★★

後味 ☆☆★★★

総合 ☆☆★★★


バナナスキィにはイケる味かも?

コーヒーで舌が麻痺していたので、味がよくわからなかったので、不明。

たぶん☆☆★★★くらい?


4月3日、初勤務、事務室をいかに居心地良く改装するか検討中。

日当たり良好、流し、冷蔵庫完備、デスクは五つ。

その部屋を好きなようにできるとあっては… 野望が膨らむのであります。


若竹七海 『船上にて』

    たぶん、それは私が本来 <作家> というよりも <生活者> だからなのだろう

                                         ( 『船上にて』 あとがき )


若竹七海さんにサインを頂いたあの日、僕は運命的とも言える衝撃を受けた。

初めて会った若竹七海さん、当時僕はまだ若竹さんの作品を読んだことが無く、

失礼ながらミーハーな気持ちでサインをおねだりしてしまいました。


しかし、二言三言、会話とも言えない言葉を交わしたその瞬間、

直感的に 「この人の小説、好きだ」 と理解してしまいました。

そしてその直感は見事的中し、現在、若竹さんの本を読み漁る日々が続いています。


若竹七海さんは人間的魅力に溢れた人で、僕はその魅力に強く引き付けられました。

そして、その魅力はどこから来ていたのかなあ?と不思議に思っていたのですが、

謎は解けました。


若竹七海さんは生活を愛している


生活することが好きな人だから、僕は若竹七海さんを無条件で好きになったのでしょう。

上記 『船上にて』 のあとがきを読み、自分がどうして若竹さんを好むのかハッキリわかりました。


今日は僕が俄かファンになった 若竹七海さんの 『船上にて』 を紹介いたします。


若竹 七海
船上にて

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日常の中に潜む殺意と意外な結末!


“ナポレオン3歳の時の頭蓋骨”がなくなり、ダイヤモンドの原石も盗まれた。意外な盲点とは――表題作「船上にて」。屋上から突き落とされたOLのダイイングメッセージの皮肉を描いた「優しい水」。5人が順繰りに出した手紙の謎に迫る「かさねことのは」など8編を収録。著者自らが選んだミステリー傑作短編集。

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若竹七海さんの小説をいくつか読み、その構成のおもしろさから、

短編や連作短篇集に真価を発揮する作家さんなのかもしれない、と思いました。

まだ読んでいないだけで、長編の方に優れた作品が多いのかもしれませんが、

どちらにせよ、若竹さんは短編の命 <構成美> を持つ作家さんであることは確か。


今回の 『船上にて』 は 『スクランブル』 とは異なり、純粋な短編集です。

一人称でかかれたもの、人物の心情を事細かに描いたもの、本格味あるもの、海外風のもの、

とにかく色彩に富んだ虹色の短編集だったように思えます。


共通している点があるとすれば、サプライズエンドが達成されている点ではないでしょうか。

各話意外な結末が用意されており、読み終えたあと、タイトルを振り返り、

なるほどお、と思わずつぶやくこと間違い無しです。




《読後感想文》


  時間

    一行目、主人公の名前 <静馬> に反応。青沼なのかー!?と期待するも、川村と明記;

    過去になってしまった女性にまつわる謎を、もみの木に支えられながら紐解くミステリ。

    今まで読んだ若竹さんの話の中で、一番情景が色鮮やかに感じられた作品でした。

    謎についても、心に突き刺さるような感じがして、僕にとっては良いミステリに感じました。


  タッチアウト

    想像力をかきたてるタイトルとキレのあるラストが話全体を見事にまとめている

    まるでBLTサンドのような、しっかりとした短編ミステリ。

    話の性質と関わるため、詳しく書くことはできませんが、この話や手法は好きです。

    why や who や how といった疑問詞が全て吹き飛び、

    読者に別な視点を与えてくれるラスト一行にやられました!

    

  優しい水

    ブラックユーモアという言葉が嫌味なく適用される話だと思います。

    二重三重の意味でタイトルの言葉が痛切に響く話でした。

    しかし、この話、推理小説として読めばブラックユーモアでニヤリとしますが、

    実際に起こったとしたら、三日間は寝込んでしまいそうな恐ろしさがありました;


  手紙嫌い

    これもラスト一行が効いた話です。まるでローストビーフにのったホースラディッシュのよう。

    どういう謎があるんだろう?と興味をかきたてられ、あれこれ想像し、

    そして結末に至った瞬間、読者は必ずツンとした辛さを感じるでしょう。

    このような終り方、人によっては苦味を感じると言うかもしれませんが、

    僕は思わず眉をひそめてしまうワサビのような刺激を感じました。


  黒い水滴

    『船上にて』 最高傑作。今まで読んだ若竹さんの作品に見られる点として、

    人物や心情の描写がさっぱりとしている点があります。

    『黒い水滴』 でもやはりサッパリとしているのですが、その中に深い心の動きを感じます。

    一番感情移入してしまった話で、最後の辺りでは冷や汗さえ出ました;

    ホラー染みた雰囲気も出ていて良かったかと思います。


  てるてる坊主

    二番目に好きだった話です。これも題名と結末とが奇妙に合致した作品

    そしてユーモラスとも言える犯行情景、しかしそれはとても残酷なもの。

    想像力のある読者ならユーモアの真の意味を理解できる話かと思います。

    ユーモアの説明をするとき、"優しい水" とこの話を例に出そうかな、とか思っちゃいました。


  かさねことのは

    本格味溢れる作品。手紙に書かれたことから状況を分析し、正しい情報を信じる。

    そのように読めば必ず結論は導きだされるのでしょうが、僕は見事に外れました。

    自分の想像していた事件の姿と、実際にあった事件の姿の差に驚きます

    そうきたかー!という気持ちにさせてくれる本格推理小説好きです。


  船上にて

    全体のタイトルとして選ばれた作品、それだけあって、しっかりとした話になっています。

    舞台は20世紀の豪華客船、ある老紳士と主人公とが夕食を取っていると、

    その老紳士の甥がやってきて、『ナポレオン三歳の時の頭蓋骨』 を購入したと言う。

    話の端々にあがる The Four Million、事件、結末、とてもしっかりした短編でした!



かねてより 「謎は解け切らない方がゾクゾクする」 と公言して止まない会長Pですが、

( ミス研会長として問題発言だと自覚しております;スミマセン;でもソッチのが好きなんです; )

本書の謎は解け切らないものが多い!

( ここで言う 「解け切る」 とはクイーンが目指した100%解等のことを差します。 )


読み手の解釈にまかせる、までは行かないけれど、

1+1=2といった数理系ロジックを好む人には向かない小説だといえます。

多くは語らない若竹さんの作風に関係しているのかもしれませんね。


短編、構成の美しさ、若竹七海さんが好きな方、絶対に買いです。


しかし、Amazonの紹介文にある言葉 『日常の謎』・・・

『船上にて』 の謎は異常なので、日常に潜む謎じゃない気がするなあ;


江戸川乱歩 『孤島の鬼』

もしも探偵小説という一個の様式を、現代推理小説と区別して使うことが許されるならば、

間違いなく 江戸川乱歩の 『孤島の鬼』 こそ探偵小説の頂点をなす一冊だといえる。


乱歩さんの長編小説は初めて読んだのですが、まさかこれほどとは・・・

全ての作品を読んだわけでも、推理小説として意識的に謎に取り組んだ経験もなく、

「お前に乱歩の何がわかる」 と言われると答えに窮するわけですが、

この探偵小説を読んだ衝撃を伝えたいと思います。


本日、ご紹介いたしますは 江戸川乱歩の 『孤島の鬼』 です。


江戸川 乱歩
孤島の鬼

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蓑浦金之助は会社の同僚木崎初代と熱烈な恋に陥った。彼女は捨てられた子で、先祖の系図帳を持っていたが、先祖がどこの誰ともわからない。ある夜、初代は完全に戸締まりをした自宅で、何者かに心臓を刺されて殺された。恋人を奪われた蓑浦は、探偵趣味の友人、深山木幸吉に調査を依頼するが……! 乱歩の長編代表作。挿絵・竹中英太郎

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中井英夫さんの 『虚無への供物』 へ至る源流を見たかのような気がします

『孤島の鬼』 を読んでいる最中、ずっと中井英夫さんのイメージが頭にありました。

同性愛を作中に盛り込んだこと、登場人物の奇怪さ、事件の怪奇さ、そして文体、

そのどれもが 『虚無への供物』 誕生の秘密に繋がっている気がします。


解説に中井英夫さんの乱歩論があるため、それをご覧になってくだされば、

乱歩の文体の秘密 "悲哀" がいかに稀有なものであるかがわかります。

その悲哀はときとしては変態的な偏愛に傾くこともあり、

また別の機会では艶かしい哀愁を感じさせるものともなる。

中井英夫さんが指摘したように、三島由紀夫の持つ悲哀と等質なのかもしれない。


文体つながりでいえば、江戸川乱歩と泡坂妻夫の文体には、

全く異なるにも関わらず、ある種似たようなものがあるように感じられます。

二人の文体を結びつける要素は 「艶かしさ」 と 「空気感」である気がします。

そしてその二点が強烈な吸引力を発揮し、小説の世界にトップリと漬からせてくれるのでしょう。

その点から、乱歩さんや泡坂さんの作品に非常な愛着を感じています。


なんだか言いたいことがまとまらないので、読後感想文




《読後感想文》


『孤島の鬼』 は他の一般的な推理小説と性質を異にしていると言えます。

ネタバレしない程度に説明するのは難しいものですが、大きく分けて二部構成であり、

主人公にとって最も関わりの深い事件は、小説が半分もいかない前半部で解決される。

残りの半分は、作者の強烈な語りの魅力により成り立つスリラーです。


前半の謎解き(といっても完全に解決されるわけではありませんが)について、

順序が逆ですが、中井英夫さんの 『虚無への供物』 を想起させるようなものでした。

つまり、『虚無への供物』 を読んで、『孤島の鬼』 を想起するということです。

推理小説の中にありながら、現実世界を強烈に意識させられる感覚です。


不可思議な密室、奇妙な人物、そして意外な解決、どれもお腹一杯です。

密室トリック解体時に、作中人物が日本家屋と密室との関係を述べていて、とてもおもしろい。


僕が最も引き付けられた部分は、小説の後半にあります。

乱歩さんが書きたかったこと、『孤島の鬼』 で描写したかったこと、それが凄い…

邪悪という言葉が人に対して使われるならば、この事件の犯人にこそ相応しい

読んでいるだけでしたが、そらおそろしい気持ちになりました。


未読の方、是非とも読んでみていただきたく思います。

これを読まずして二十数年間生きてきたこと、少しもったいなく思いました。


結局、どこがどう良かったか、何も説明できませんでしたが、とにかく良かったのです!

事件のアレとかコレとか!ええー、そういうことだったのね!とか、ナニー!とかとか。

そんな感じで、騒ぎながら読んでいたわけです。ハイ…



探偵小説、ランポスキィ、孤島、奇怪な老人、こういったキーワードに反応したアナタ、買いです!


小池滋先生・日暮雅道先生による対談 「シャーロック・ホームズの新世界」

なんと、英文学を志した人、ディケンズを読んだことのある人なら誰しもお世話になったであろう、

小池滋先生が TRICK+TRAP にいらっしゃられる模様!

僕もいくつかの本を持っており、ディケンズの伝記でお世話になりました。


5月20日の16時より、TRICK+TRAPにて、小池滋・日暮雅道両先生によるトークセッション

トークのテーマは 「シャーロック・ホームズの新世界」 だそうです!

( 情報元: 2006.23.March 『パン屋のないベイカーストリートにて』


やー、小池先生は学者としても人としても優れた人ですので、

トークセッションは必ずやおもしろいものとなるはずです。


英文学専攻の学生、ホームズ好き、日本女子大卒業生は迷わず参加することです。

といいつつ、5月20日・・・あまりにも先な上、それほど乗り気ではなかったりする元学生でした。


学位授与 ~文学修士そして就職~

本日を持って某沢柳政太郎の大学の博士課程前期を修了しました。

無事学位授与式を終え、学位記を頂戴してまいりました。


gakui


某四次元殺法コンビの片割れ、正義超人ではありませんが、モザイクということで;

「ストップ・ザ・タイム!」 とか 「クロノス・チェンジ」 とかあこがれましたね。

伝説的タッグ技、四次元交差! これにはシビれる、あこがれる!


四次元殺法コンビって何?って方は以下数行トバシテください。

penbla


その、なんというか、四次元殺法コンビです↑

ブラックホールとペンタゴンはいとこ同士らしいです。

ペンタゴン(白)の背中に羽が見えていて、芸が細かいですね。


さらにこんなアスキーアートもあるようですね。

文面はかってに付け加えさせていただきました。


      ~四次元殺法コンビ~


      r ‐、
      | ○ |          r‐‐、
     _,;ト - イ、      ∧l☆ │∧   良い子のみんな!
    (⌒`    ⌒ヽ   /,、,,ト.-イ/,、 l     キン肉マンネタがわかるのは、
    |ヽ  ~~⌒γ⌒) r'⌒ `!´ `⌒)      30以上の大きいお友達だけだ!
   │ ヽー―'^ー-' ( ⌒γ⌒~~ /|       年齢踏み絵には気をつけよう!
   │  〉    |│  |`ー^ー― r' |
   │ /───| |  |/ |  l  ト、 |
   |  irー-、 ー ,} |    /     i
   | /   `X´  ヽ /   入  |

  《ブラックホール》  《ペンタゴン》


まあ、そんな感じで修了いたしました。


学位授与式を終え、立食パーティでお世話になった先生方に挨拶をし、

そのまま帰るのもなんだったので、吉祥寺に行ってまいりました。

目的はもちろん TRICK+TRAP です。


TRICK+TRAP に行き、乱歩さんと綾辻さんの 『暗黒館』 を買ったところ、

どこかで顔を覚えていてくれたのか、「近所の方でしたっけ?」 と戸川さん。

沖縄出身の方でしたよね?とか、どなたか別な方と間違えている予感!

二言三言話せて楽しかったです。 これからも足しげく通いたくなりました!


井の頭公園を散策して、帰る途中、かねてより目をつけていたアタッシュケースを購入。


woody


大きさ比較のため、CCレモンのペットボトルを置きました。

中々実用的なサイズな上、一番大きな特徴は、木製という点にあります!

おそらく木製のカバンを持ち歩いている人はいなかろう、と特別な気持ちを味わえました。


そんな自分へのプレゼントを抱えつつ、吉祥寺を後にし、

延々と続くかと思われた学生生活に終止符を打つこととなりました。


教授陣には 「出戻って来い」 と言われましたが、もう勘弁していただきたい;


明日は学位授与式

明日は卒業式の他に学位授与式があるようです。

スーツも新調したことだし、心機一転の門出を経験してみようかとおもいます。


帰りに吉祥寺に寄って、TRICK+TRAP … なんて言ってられないほど疲れそうですわ。


江戸川乱歩 『D坂の殺人事件』

かつて 「我国における唯一の探偵作家」 と呼ばれた江戸川乱歩

その怪奇極まる小説を読むと、物語の中へ吸い込まれ、気がつくと一冊読み終えてしまっている。

そんな体験をさせてくれる乱歩さんの語りには毎回驚かされます。

日本人作家の中で最も好きな作家さんの一人です。


先ほど読み終えた 江戸川乱歩 『D坂の殺人事件』 を紹介させていただきます。


Dsaka
江戸川 乱歩
D坂の殺人事件

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日本の推理小説の礎を築き上げたのが江戸川乱歩であるのは異論のないところだろう。その巨人の短編小説の粋を収めたのが本巻である。デビュー間もない時期に発表された「二癈人」を筆頭に、ご存じ明智小五郎が初めて登場した記念すべき「D坂の殺人事件」から、戦後の名品「防空壕」に至る全十編を、初出誌の挿絵を付してお届けする。

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巻末の解題にて編集者の戸川さんが述べている通り、初出にこだわった作りとなっております。

読みやすいように現代仮名遣いに直ってはいますが、注なども詳しく

また嬉しいことに削除前の文章や改訂前の文章なども巻末に載っている!


さらに乱歩さん自身の自註自解と証する解説まで載っており、大変だったでしょう。感涙モノです。

小さい頃、『人間椅子』 という短篇を読み、独特のエロス、居心地の悪さ、這い寄る悪意を感じ、

その後の読書嗜好に多大な影響を与えてくださった乱歩さん。


変態的な短篇が多いため、Pの人格を疑われるかもしれませんが、乱歩さん大好きなのです。

ときどき、その小説群に我が身の分身のような愛情を持ってしまうことすらあります。


今回紹介する 『D坂の殺人事件』 は表題作をはじめとする10話から成る短篇集で、

『日本推理小説全集2 江戸川乱歩』 『孤島の鬼』 そして本書の三冊をもって、

江戸川乱歩の真髄を味わうことができると言われるほど重要な一冊です。

編集なさった戸川さんの熱意が伝わってくる構成でありました! 感激!


四の五の言わず買いなわけですが、とりあえず読後感想文。



《読後感想文》

  二廃人

    乱歩さんが得意とする "無遊病" をテーマにした探偵小説

    大正13年に発表されたにも関わらず、現代においても色あせぬ魅力がある!

    夢・幻・現実の境を越えて生きる "夢遊" の神秘を描くウマさがあります。


  D坂の殺人事件

    いわずと知れた明智小五郎初登場の短篇小説。

    地味だけれど怪異な事件、ぐいぐい引き込まれる中盤、そして意外な解決。

    探偵小説の基本が全て揃っている良作です。 短篇 "心理実験" との関連も面白い。


  赤い部屋

    この短篇集の中でもかなり好きな話。 何度か読んだ記憶があります。

    ルヴェルの 『夜鳥』 に収められているある作品と似たテーマを持つもので、

    そのテーマは乱歩の方がより深く、そしてより稚気溢れるものへとなっています。

    なんと言っても結末の感じが乱歩さんの人格を垣間見るようでイイ!


  白昼夢

    6ページほどのショートショート、それでも内容の濃さは素晴らしい。

    異常性が語られているも、周りの認識とのズレにより、異常性が見過ごされる

    怪奇小説の手本のような話でした。 初めて読んだけれど、これは傑作。


  毒草

    貧困層の悲劇を描いた作品で、淡々とした文章には背筋がゾッとする感触があります。

    犯罪は起きていませんが、主人公の心の中の動きを追っていくと、

    そこには 『罪と罰』 の ラスコーリニコフの恐慌と似たものがある気がする。


  火星の運河

    これは探偵小説ではないです。幻想小説?とでも言ったらよいかもしれません。

    巻末の自註自解によると、乱歩さん自身が見た夢の話だそうです。

    一体どんな悩みを抱えていたのだろう・・・ この夢は観たくないですね;


  お勢登場

    勧善懲悪をよしとする当時の読者たちはどんな感想を持ったのだろう。

    主人公の味わう大苦痛は鬼気迫るものがあります。

    それに対してあくまで無関心な周囲の人物、両者の対立が物語りに不思議な魅力を与えている。


  

    この短篇集の中で一番の問題作なのではないでしょうか?

    のたうちまわる虫、虫、虫。 まさに覚めやらぬ悪夢を感じました!

    結末直前に見せる主人公の精神的動向は、人の本質を鋭く突いた描写といえます。


  石榴

    本格推理小説の手順をカッチリ踏んでいるかと思います。

    しばらくザクロが食べれなくなりそうな話ですが、

    話自体はとても興味深く、一生懸命素人推理を働かせてみました。


  防空壕

    主人公の異常性を空襲で焼ける街並みと照らし合わせることで、関連付け、

    炎のような情欲と火に対する変態性欲が見事に推理小説に組み込まれた例。

    結末の意外性は本当におもしろいものです。



乱歩さんの小説は、事件の怪異性、中盤のリーディング、意外性に富むラスト、

これら三つの要素で成り立っているかと思います。


探偵小説、怪奇小説、変愛、フェティシズム、これらの単語にピンと来たら即効買いです。


飲物 カフェラテ桜風味

個人的に更新が楽しみな 「あちき」と「ありんす」の勝手にドリンクレビュー~そしてゲテモノへ…~

様々なドリンク ( おいしそうなものからゲテモノまで ) を細にいって研究しておられるサイトです!

( いつもお世話になっている、chisaの水色ブログさんの姉妹ブログなのです。 )

食べ物でゲテは嫌ですが、飲物のゲテは大好きなので、ちょっとマネさせていただきます。


以前、ゲテ飲物でポーションを紹介したのですが、ネトミス副会長のBも飲んだ模様。

「おいしかった」 そうです。 たぶんHPが減っていたんだろうな。

青くなかったら毎日飲むと頼もしい言葉をいただいたので、是非がんばって細いの出して欲しい!

かげながら応援しているのであります。


さて、そんなポーションを上回る素敵ドリンクを捜し求めて、本日ソレっぽいの見つけました!


その名も カフェラテ桜風味!!


sakurahuumi


ソース元、Family Mart のオリジナルブランド Passo Presso の製品だそうです。

http://www.family.co.jp/company/news_releases/2005/050330_2.html


なんというか、名前からソレっぽい雰囲気を醸し出している!

香りが命のコーヒーに桜の風味をブレンド… どうなんだ!


naka


とりあえず開けてみました。 パッケージには桜色の液体が描かれていたので拍子抜け。

普通のカフェラテ色(?)でした。 うーん


香りを香ってみたところ、これまた普通


一口飲んでみても、これまた普通


あまりにもコーヒーが強すぎて、桜の香りがあまりしない…

そしてあまりにも整いすぎた味、桜の風味はどこ?


総合 ★★☆☆☆ 無難な味なので気分を変えたいコーヒー好きにはオススメ。

香り ★★☆☆☆ コンビニコーヒーの典型、桜の香りがする気がする?

味  ★★☆☆☆ コンビニコーヒーそのまま、無難なカフェラテ味、胃に残る感じがチョット…

ゲテ ☆☆☆☆☆ 名前に期待しすぎたかもしれません。


ゲテモノスキーの方にはイマイチかと思います。

今日も今日とて 伝説のミントウォーターを超えるゲテモノドリンクを探してPは行く!